ブルーアイズ3体出すと負ける説について真剣に考えてみた

その白龍は、勝利ではなく敗北を連れてくる
「俺、ブルーアイズ3枚持ってるんだぜ」
──そう言われた瞬間、なぜか私は「あ、こいつには勝てる」と思ってしまうのです。
それはもう、登山前日に新品の登山靴を買った人を見るような気持ちです。準備万端に見えて、実は一番危ない。山をなめるな。ブルーアイズをなめるな。逆だ、もはやブルーアイズがお前をなめている。
「伝説の白き龍」などと呼ばれているこのカード、出せば出すほど、なぜか敗北の香りが漂う──気がする。
本日はその「気がする」に、真剣に、しかしムダに突っ込んでみようと思います。
どうも、てぃらのです。
会社では「報告資料、今夜までに出せますか?」と訊かれ、家では「Eテレ、録画しといてくれた?」と訊かれ、気づけば誰かの指示でばかり動いてる、レベル4通常モンスターの人間です。
でも、心の中ではずっと「滅びのバースト・ストリーム!」って叫んでる。
社内ミーティングでも、家庭の食卓でも──ターンエンドできる瞬間が、ない。
そりゃあ、ブルーアイズにも憧れますよ。攻撃力3000、指示を受けない、登場するだけで尊敬される。一方こちら、体力残り600で上司のプレッシャーを毎ターン食らってますからね。
「仕事はエンドフェイズで」とか言ってるけど、永続魔法のように居座るのは上司の説教です。
子どもの頃「海馬デッキ」を真似して組んでみたけど、ブルーアイズを1枚も持ってなかった。ブルーアイズに憧れた、出せなかった世代です。
当時の私のデッキは「カオス・ソルジャー(儀式)」「デーモンの召喚」「マンモスの墓場」などがごった煮になった、言うならば日替わりトンチキ定食デッキの使い手でした。
全体的に、にぎやか。でも勝てない。
ブルーアイズは遠かった。高かった。
カードショップのショーケースの奥、透明のスリーブに厳重に守られた「高貴な龍」は、駄菓子屋でパックを買う子どもたちの手には届かなかったのです。
ブルーアイズの価格、暴れすぎでは?

同じ「青眼の白龍【ウルトラレア】」でも、状態によって価格差がとんでもない。
- Aランク:260,000円(鑑賞用に飾るレベル)
- Bランク:39,800円(コレクター用、在庫あり)
- Cランク:6,080円(SALE中、在庫なし)
- Dランク:2,190円(戦闘用にギリ使えるやつ)
つまりこのカード、召喚するより、売った方が強い説あります。
(出典:トレトク公式サイト)
なぜ“最強”が勝てないのか?
さて今回のテーマは、「ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンはなぜ勝てないのか?」という疑問です。
攻撃力3000、守備力2500、レベル8。
バニラ(効果なし)ながら、当時としては破格のステータス。
それなのに──出しても、勝てない。むしろ出した瞬間に、相手が冷静になる。
「はい、激流葬ね」
…おい、やめろ。さっきまで墓守の召喚士しか出してなかったくせに。

出典:ラクマ掲載商品ページ
この“ロマン=敗北フラグ”という現象、どうにか解明できないか?
ということで、脱線しながら掘ってみましょう。
ブルーアイズを出すというのは──言うならば、マニュアルのフェラーリで首都高に乗る中学生です。
そりゃ事故る。
スピードは出る。パワーもある。でも、扱いきれない。
まずエンジンをかけるのにクラッチが必要。そもそもクラッチって何だ。
「なんか“C”から始まるやつって強そうだよな」くらいのノリで乗ってきてるのに、操作が玄人すぎる。
何より出すのに2体リリース。つまり、他のカードを差し出さないと召喚できない。
小学生の財布でマクラーレンのガソリン代をまかなえるわけがないのです。
燃費とか以前に、まずガソスタで給油口の開け方がわからない。
そして苦労して召喚したその白龍は──
「奈落の落とし穴」によって、何のリアクションもないまま地下へ消えます。
「えっ…何もさせてもらえず…?」
出た瞬間に、強制退場。
その潔さ、ある意味プロレスラー。派手に登場して、入場中にイスで殴られて退場。
さらにブルーアイズ3体を使って出す「青眼の究極竜」。攻撃力4500、ド派手な3つ首。
「これは決まった!」と思ったら──
「はい、激流葬」
…うん。レアカードなんだから、せめて光らせてやれ。
ホログラムで輝いてるのに、フィールドでは即・闇落ちです。
ロマンの正体、それは「置き物」
ではなぜ、ブルーアイズは“勝てない”のか?
その理由を探るには、まず現代遊戯王の状況を少しだけ俯瞰しなければならない。
──つまり、「カードゲーム界における、老後のリアル」を覗きに行くのです。
🔹 ステータスは強いが、効果がない(バニラ)
攻撃力3000。堂々たる数値。しかし、それはもう昭和の履歴書です。
「学歴は?」「筋肉は?」と聞かれた時代は終わった。
現代の遊戯王は「効果」「展開力」「制圧」「リソース回復」が求められる。
要するに「肩書きより、何ができるか」である。
ブルーアイズは何もできない。いや、“殴る”しかできない。
でもその一発を出すまでに、
・レベル8(=2体リリース)
・魔法カードで墓地から釣る
・展開札を経由する
…と、出す過程がもはや大縄跳びのタイミング合わせ。
出して、やっと殴れて──やられる。
仕事で言うと、プレゼン資料を20時間かけて作って、上司に「イメージと違う」で即ボツになるようなものです。
心が折れる。いや、カードが折れる。
🔹 サポートカードで補強されるが、結局“重い”
たしかに「太古の白石」「復活の福音」など、ブルーアイズ専用サポートは多い。
でもそれらを積んでいくと、デッキがだんだんブルーアイズを支えるための高齢化社会になっていく。
もうこれ、デッキというよりケアマネジャーのチームです。
- 「白石くん、墓地から呼び出しお願いね」
- 「福音さん、除去されないように守ってあげて!」
- 「オルタナティブさん、今日は無理しないで!」
──ここ、老人ホームかな?
展開のテンポが早い現代で、この介護体制を維持するのは大変です。
そしてようやく召喚できたブルーアイズは、やはり除去される。
頑張ってるのに報われない。そんな背中に、我々は感情移入してしまうのです。
🔹原作では“感情の象徴”
そして忘れてはいけない。
ブルーアイズは、性能で使われているカードではない。
“物語の象徴”として使われているのだ。
海馬にとって、ブルーアイズは執念であり、誓いであり、未練であり、魂である。
「元恋人の魂が宿っている」という裏設定も語られるなか、彼はそのカードに、戦闘力ではない“物語の重み”を見ている。
現実世界でいえば、機能的には使わないけど、捨てられない日記のようなもの。
あるいは、中学の頃にもらった手紙を、いまだに本棚の奥にしまっているような感覚。
つまりブルーアイズは、実力で殴るカードではなく、物語を背負うカードなのです。
でも、それでも僕たちは出したい。
ブルーアイズは“自分の物語”を召喚するカードなんですよ。
大会で活躍するのは、「閃刀姫」「ティアラメンツ」「斬機」──その名のとおり、機械のように洗練された理詰めのデッキたち。
まるで就活生のように、「回転率」「効率」「コスパ」を求めて動く。完璧。でも、ちょっとだけ味気ない。
その中で、ブルーアイズはどうか?
召喚までに3枚必要。出したら除去される。事故る。腐る。勝てない。
でも、それでも──出したい。
それはもはや恋愛に似ている。
「どう考えても釣り合ってない」
「他に安定した相手がいる」
「そもそもあっちはこっちに興味がない」
──でも、それでも「好き」と言いたくなる。
そんな相手、誰しもいたはずです。
ブルーアイズは、カードになった“あの頃の片思い”なのかもしれない。
「ドロー!モンスターを通常召喚!
そして手札の“死者蘇生”を発動ッ!!
帰ってこい…ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン!!」
って、言いたいやん。
勝てるとか勝てへんとか、そういう話ちゃうねん。
“滅びのバースト・ストリーム!!”って、叫びたいだけやねん。
向こうが大会優勝を目指してカードを選んでる横で、
こっちは「叫び映え」を基準にデッキを組んでる。
合理じゃない。最適解じゃない。
でもそれが、俺のターンなんです。
それでも、伝説は飛ぶ
ブルーアイズは、たぶん「勝つためのカード」じゃない。
信じたいものを、信じさせてくれるカードなのだ。
勝てないと分かっていても、出したい。
手札で腐っていても、「いける気がする」って思ってる。
これはもう、恋か宗教か妄想のどれかである。
除外ゾーンにいても、デッキの底で眠っていても、
こっちは心の中で毎ターン召喚してる。
仕事の合間にも、会議の途中でも、「滅びのバースト・ストリーム」って心で叫んでる。
現実では出せない。けど、気持ちではもう出してる。
もはやこれは、“脳内召喚”やわ。
Bluetoothよりも速いレスポンスで、心のフィールドに現れる。
たとえ勝てなくても、たとえ相手の誘発で止められても、
こちらのターンは終わらない。
だって、俺のターンなんやから。
そう思って、今日もブルーアイズをデッキに入れる。
勝てるかは知らん。でも──
負けるなら、ロマンで負けたい。
伝説の白き龍に、全力で負けたい。