歯が痛いのを虫のせいにすんな。

先日、歯が痛くなって歯医者に行ったら、先生にこう言われた。
「虫歯ですね」
……虫?
令和のこの時代に、まだ虫のせいにしてんの!?
俺は一応、社会人としてそれなりに責任を持って生きてるつもりだ。
自分のケツは自分で拭く。そう心がけてきた。
にもかかわらず、口の中で起きたトラブルの原因が「虫」だという。
虫が、わざわざ俺の奥歯にまでやって来て、地道に穴を開けていったとでも?
虫もそんなに暇じゃない。
虫は葉を食べるが、歯は食べない。

己の怠慢を虫のせいにしてるやつらに、俺は言いたい。
歯が痛いのは、お前のせいや。虫は悪くない。
──今日はそんな、無実の虫に濡れ衣を着せ続けている世界について、
いっちょ真剣に考えてみようと思う。
どうも、てぃらのです。
普段は会社員として、スーツのポケットにレシートを詰め込みながら生活しています。
仕事に追われ、副業に追われ、1歳児の「ブロッコリー食べない期」にも追われ、
カツオのたたきみたいになってます。火が通りきらないのに外野からガンガン叩かれてる。
そんな僕でも、自分のミスは自分で認めたいと思ってます。
電車で寝過ごしたら、「駅が悪い」とは言いませんし、
エクセルの計算ミスも「数式が勝手に…」とは言いません。
ていうか、言ってましたけど、最近は反省するようになりました。
だから、歯が痛くなったときに「虫のせいにすんなよ」と思うわけです。
人間の成長とは、「虫歯は虫のせいじゃない」と気づくことなのかもしれません。
虫の視点に立ってみようか
虫の視点に立ってみてほしい。
葉っぱの裏で静かに暮らしていた虫たちは、
ある日突然「歯の中にいる」などという濡れ衣を着せられた。
なぜだ。誰がそんな噂を流したのか。
虫の脳内で藤原竜也が叫んでいる。
ど゛お゛し゛て゛だ゛よ゛お゛ぉ゛お゛お゛お゛ぉ゛!!

虫は歯を食べない。葉は食べるが、歯は食べない。
しかも、なぜか毎日ちょっとずつ穴を開けていく“コツコツ系の仕事”をしていることになっている。
虫たちは葉っぱの裏で、今日もまじめに生きている。
それなのに、何の根拠もなく「歯を蝕む存在」にされている。
虫にしてみれば、とんだ風評被害だ。
でも昔の人は、本気で虫のせいだと思っていたらしい。
驚くべきことに、「虫が歯に穴をあける」という考え方は、実際に世界中で信じられていた。
最古の記録は、古代メソポタミア文明(紀元前7000年ごろ)。
当時の医学文書には「歯の中に虫が入りこみ、食べ物を奪い合うから痛みが出る」と記されている。
歯痛=虫。
しかもそれは江戸時代まで世界中で根強く信じられていた。
日本でも、「歯の虫を取る呪術」が存在していて、針で歯を突いたり、お線香の煙で虫を追い出したりしてたらしい。
たぶん、それ神経や。
こうして虫たちは数千年にわたって「歯に悪さをする悪の組織」みたいにされてきた。
言い換えるなら、
「虫さん、おかんむり」状態で2000年である。
人間は”過ち”を認められる生き物である
それでも、人間はある日気づいた。
「これ、虫ちゃうな」
実は、虫歯の原因はミュータンス菌という口腔内細菌で、
糖をエサにして酸を出して、歯のエナメル質を溶かしていく──という話。
ようやく気づいたんです。「虫じゃない。俺のせいか。」と。
これはつまり、
寝る前にポテチ食べて、歯も磨かず寝落ちして、朝に「虫歯かも」って言ってるあなたのせいです。
虫じゃない。
だがしかし。
虫の名前は、ずっとそのまんま。
人間ってそういうとこある。
虫に謝るために、新しい名前を考えよう
というわけで、虫の名誉を回復するために、
ここでいくつか新しい呼び方を提案したい。
🦷ズボ歯
寝る前にポテチを食べ、磨かずに寝る。
朝起きて、気づいたら穴が開いてる。
それを、しっかり名付けよう。
医者:「ズボ歯、3本ですね」
俺 :「もうちょっと優しく言ってくれ。」
🦷う蝕
これ、ほんまは医学的に正しい名前。
でも「う蝕で早退します」って言うと、整腸剤でも飲んでそうな響き。
健康っぽさが逆にややこしい。
🦷C2ポケット
虫歯の進行度C1〜C4の中で、C2はまあまあ痛い。
その小さな穴を、都市伝説っぽく呼んでみた。
医者:「C2ポケット、開いてますよ」
俺 :「ホラー映画のキャッチコピーですか?」
🦷怠惰性歯穴症(たいだせい・しかけつしょう)
もはや漢字の圧で説教してくる名前。
たぶんこれ診断されたら、歯より先に心が折れる。
医者:「君は……怠惰性歯穴症ですね」
俺 :「人生ごと否定されてる気がする!」
やっぱり、虫歯って名前がちょうどいい。
ここまで散々言っといてなんやけど、
やっぱ「虫歯」って、意図的に名付けられたかわいい名称なのかもしれない。
「ズボ歯」って言われたら立ち直られへんし、
「C2ポケット、開いてます」って言われたら不安でたまらなくなる。

でも「虫歯ですね」って言われたら、
なんか、「あ、虫ならしゃあないな…」って気になる。
ちょっとだけ、許されてる感じがする。
名前がかわいくないと、歯医者にも行く気にならない。
だから──
虫歯を放置するのも、
虫歯って呼び続けるのも、
たぶんぜんぶ、俺たちの甘えなんやと思う。
虫さん。
ほんまに、すみません。
でも、もうちょっとだけ名前、貸しといてな。