厚切りジェイソンはカレイで憂鬱になりアジで発狂する

左ヒラメに右スナモグリ
「カレイって名前、芯を食ってないんとちゃうか?
スナモグリの方がよっぽど似合うやろ。」
抑えきれないのは怒りだけではなかった。
気づけば、代替案まで考えてしまっていた。
“スナモグリ”
……うん、悪くない。
特徴をしっかり捉えた、むしろ秀逸なネーミングに思えてくる。
同時に、カレイに対するモヤモヤが膨らんだ。
「カレイ」と聞くと、“華麗”とか“カレー”とか、どうも本質を捉えていない印象になる。
「カレイって呼ぼうや!」と提案した誰かに、今さらながら問いただしたい。
なぜカレイ? どして鰈?
気になってしかたがない。
というわけで、俺はカレイの名前の由来を調べはじめた。
名は体を表す
調べ始めて1時間。
カレイとは関係ないところで、思わず「へー!」と声が出る。
魚の名前の由来って、ざっくり2パターンあるらしい。
①読み方に特徴が出てるパターン
例:ヒラメ(平たい目)、マグロ(目が黒い)
②漢字に特徴が込められてるパターン
例:サバ(青い=鯖)、イワシ(弱くて群れる=鰯)
つまり、読み方か漢字を見れば、魚の特徴がなんとなく見えてくるという構造だ。
厚切りジェイソン氏あたりが、
「パターン見えてきたよォ〜〜!!」ってテンション上がりそうな分類。
厚切りの彼と、薄いカレイ
そこで彼に、カレイ(鰈)という漢字を見せてみる。
「カレイ? あぁ、魚のやつね。
魚へんに、なんか枯れ葉みたいな字ついてるやつでしょ?」
──鰈
きっとこう言うだろう。
「枯れ葉っぽい魚だからカレイ。日本語、カンタンダネー!」
……どれどれ、由来を調べてみると──
「エイが干からびた姿に似ているため、“枯れエイ”→“カレイ”になった」
Why Japanese people!!
魚を魚で例えるなヨ!!!
「枯れ葉みたいだから」でええやん!!!
せっかくのパターン、ここでブチ壊しやないか!!!
厚切りジェイソン氏も、きっと発狂してる。
それにしても、ほんま何なんやこの名づけ。
納得できる由来が見つからんと、気持ちが収まらへん。
先生だからって何でも知ってるワケジャナイ
Google先生。
あなた、すべてを知ってるんですよね?
「カレイ 名前 由来」
「カレイ 語源」
「カレイ なぜ 鰈」
「カレイ スナモグリ 改名」
──検索ワードを変えつつ掘り下げても、これといった“ドラマ”は出てこなかった。
スターウォーズ級の壮大なエピソードを期待してたのに…
これじゃあ厚切りジェイソン氏が、魚へん漢字への信頼を失ってしまうかもしれん。
せめて、わかった範囲だけでもまとめておこう。
どうやら「鰈」という字が最初に文献に登場したのは、延喜年間(西暦920〜923年)の『本草和名』らしい。
イジヨウ!!
──え、うすっ!
うすっぺら!
カレイ並みに!
5. 言ったもん勝ちのこんな世の中に POISON
カレイに文句を言うだけのつもりだったこの記事、
終わろうとしたその瞬間──さらに驚く名前の魚を見つけてしまった。
アジ(鯵)。
あまりの衝撃に、頭の中で青鯖が宙にふわりと浮かんだ。
アジの名前の由来、知ってる?
「あまりに味が美味しすぎて、参ってしまったから」
──えっ、なにそれ。
そんなんアリ!?
味が美味しいからアジ!?
完全なる“言ったもん勝ち”やないか!!
しかも漢字の「鯵」も、“參る”の意味があるらしい。
味の良さで参ってる感、二重表現やん。気合い入りすぎや。
たしかにアジはうまい。
日本の食卓を支える立派な魚や。
でも、「名前と実力が見合ってるか?」と言われると…どうや?
「アジより美味い魚、他にもあるやろ…」
そう思ってるの、俺だけちゃうはずや。
多様化社会ではタイがアジを名乗る
俺の推し魚、それは──タイ。
味・見た目・めでたさ。どれをとっても最強。
タイこそ、「アジ(=味)」という名前を名乗るにふさわしい。
考えてみてほしい。
めでたい日はタイを食う。
七福神・恵比寿様の腕にもタイ。
赤飯と同じくらい、祝福の象徴やろ?
昔はアジが味ナンバーワンやったのかもしれん。
でも現代は違う。
タイや。タイのターンや。
というわけで、提案です。
今日からタイを“アジ”と呼びませんか?
こういう時は「多様化!」って言っとけばだいたい通るらしいし。
現代社会、万歳!
鎌倉時代はコイキングが人気のポケモンだった
ちなみに、タイのめでたさにもルーツがある。
「鯛は“めでたい”から」とよく言われるが、実はこの語呂合わせが広まったのは江戸時代から。
それ以前は、コイ(鯉)が人気No.1魚やったらしい。
あの、口パクパクしてるやつやで。
地味顔のコイが、まさかの王者ポジション。
なんと『徒然草』にもこんな記述がある。
「鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものなれば、やんごとなき魚なり」
魔翻訳すると、
「鯉は天皇の前でも調理されるような格上の魚でっせ」ってことらしい。
マグロの解体ショーみたいなやつ、当時はコイでやってたんか?
さらに調べてみると、中国由来の伝承で、
「黄河の激流を登りきったコイは、竜になる」
という逸話があり、それが鎌倉時代の日本にも影響していたとのこと。
──そう、
コイキングがギャラドスになるのは、ここから来てる。
ゲームフリーク、仕事細かい。
終わりに
カレイはスナモグリに改名しろ!
アジはタイが名乗るべきだろ!
──そう主張したかったこの記事やけど、今はこう思っている。
やっぱり、カレイもアジもそのままでいいやと。
名前と特徴がズレていたとしても、それはそれで“らしさ”なのかもしれない。
「名は体を表す」と言うけれど、体が名に寄せて生きる必要はない。
翼って名前の子が、パイロットにならなくてもいいし、
“海翔”と書いて「サーフィンやらなきゃ」って義務感を抱く必要もない。
名前に縛られなくていい。
自分らしく、生きていけばいい。
──それが、多様な価値観を受け入れる現代社会なんやから。
それぞれが心から愛してやまない魚を、鯵(アジ)と呼ぼうや。